魅惑への助走
 「無理でしょう。第一私には、才能がなかったみたいだし」


 もしも私に、ほとばしるくらいの小説家としての才能があったとしたら。


 出版不況が続く業界における救世主として崇め奉られ、大切に扱われデビューさせてもらっていたはずだ。


 それがなかったから私は。


 小説家への夢を悪用され、何人もの男たちにおもちゃのように……。


 「実は俺の知り合いが、今度スタートする携帯小説サイトの、編集長に決まったんだ」


 「携帯小説?」


 確か榊原さんが、SWEET LOVEで活動する前にそういう場所で活動していて。


 かなりの人気を博していたらしいけれど。


 「携帯小説は、書き方とか表現方法とかが普通の紙の小説とは若干違うとかで、要求される能力も異なるらしいんだ。新人作家募集中とのこと、明美も挑戦してみたら?」


 携帯小説は中高生に人気があるもので、大人世代は対象外かと思っていた。


 しかしこの度、大人の女性向けのサイトをオープンさせるらしい。


 まあいつまでも中高生対象に絞っていれば、いずれ飽和状態になるのは明白。


 SWEET LOVEもAV市場を女性へと開拓して成功しつつある。


 今まで未開の地だったエリアを開拓することにより、新たなユーザーの獲得に繋がるのだろう。
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