魅惑への助走
 「……萎えますか?」


 なかなか敬語の関係を卒業させないまま。


 いつまで経ってもよそよそしいと、不満を募らせてしまうのではないかと少し心配になる。


 「それもまた趣があるよ。お行儀のいい女を乱すのも、征服心をそそられるかも」


 「葛城さん、」


 「言葉遣いは……無理して変えなくてもいいから。明美の使いやすいままでいい」


 それ以降は、互いを求め合うことに夢中になってしまい。


 敬語の話は打ち切りに。


 久しぶりによぎった上杉くんの面影を打ち消すかのように、私は葛城さんの背中に強く腕を回していた。


 体の奥深くから、全ての感覚を快感に変えて。


 過去の苦い記憶は、何もかも打ち消してしまえるくらいに……。
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