魅惑への助走
 そう、携帯小説家としてデビューし、肩書きを手にしたものの。


 何を書くかは全て、担当編集者である梨本さんの言う通りにしなければならなかったのだ。


 梨本さんが独断で決めているのではなく、背後に存在するmagic theaterの編集部の人たちが相談して決定していて。


 梨本さんはそこで決まったことを、私に伝えているだけのようにも思えた。


 まだオープンして一年ちょっとのサイトだけど。


 あれこれ本を発売してみて、このサイトのメインユーザーである大人世代の女性たちに一番ウケるのは、売り上げグラフなどから推測してもオフィスラブジャンルであることが判明したらしい。


 その傾向を元に、梨本さんは私に次回作もオフィスラブで……と勧めて来る。


 大賞受賞者である私には失敗が絶対に許されないようで、作品の設定などもかなりアドバイスを受ける。


 いや、それはアドバイスというより、むしろ命令。


 今後も本を出版し続けるためにも、私は上からの命令に逆らうことはできなかった。


 敷かれたレールの上を歩いているだけの……。
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