魅惑への助走
 女の子がシンデレラに憧れ、つらい毎日から救い出してくれる王子様を待ち焦がれるのは、世界万国共通事項なのだと思いつつも……。


 「逆も……、またしかりなのでしょうか」


 「逆?」


 「例えば。身分も地位もお金もないイケメンを、女が見い出して磨き上げる、逆シンデレラストーリーとか」


 「えーっ、そんなダメ男、ウケない」


 一蹴された。


 「ただ。お金も地位もあって、パトロンとなることを厭わないマダムとかだったら、その手の設定にも共感してくれるかもしれないけどね」


 「パトロンですか」


 「ブラック企業で心身ともに疲弊しているなんてまだましなほうで、ヒモ男やDV男、浮気男なんかにうんざりしている女性たちはほんとに多い。そういう女性たちが本の中でも、またダメ男に出会って癒されると思う?」


 「あまり……」


 「でしょ? 現実はうんざりすることが多いから、やはり本の中では夢を見ていたいから」


 梨本さんの意見はごもっともすぎて逆らえない。
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