魅惑への助走
 「ただ私、ハイレベルな男っていうのがイマイチ上手く描写できなくて」


 「何言ってるの。自分の夫。葛城さんこそハイスペック男を具現化したようなもんでしょ」


 梨本さんは笑い出した。


 「そういう時は自分の夫を事細かに観察すること。案外日常生活にヒントは隠れているものだから」


 確かに葛城さんは、携帯小説の相手役として申し分なく、いわゆる「ハイスペック男」を具現化したような存在。


 イケメンでお金もあって地位もあり、私にセレブな生活を提供してくれている。


 仕事の際はかなりのやり手らしいし、それでいて二人きりの時は限りなく甘く……。


 「あなたたち夫婦の馴れ初めから現在まで至るノンフィクションを書いてくれたら、それこそベストセラー間違いなしだと思うんだけどね」


 ……ヒモ状態の彼氏を抱え、金銭的に苦しかった一人のOLが。


 職場のボウリング大会で偶然知り合ったイケメンエリート社長と、勢いで一夜のあやまち。


 流されるまま二股関係を続けた末に、彼氏と別れて社長と結婚。


 海外での優雅な生活、そして携帯小説家としてデビュー。


 まさか私小説として発表するつもりはないけれど、言われてみれば波乱万丈の展開かも。
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