魅惑への助走
 とはいえ、ここで終わりだったらわたし的にはイマイチ面白くない。


 二人はずっと幸せに暮らしました、めでたしめでたし……ではどこか心に残るものがある。


 私をもやもやさせるのは、そう、幸せな結婚と引き換えに捨てられた、元カレの存在。


 捨てられた恨みで刺される……刃傷沙汰などはさすがに後味が悪すぎる。


 でも何らかの復讐があったほうが、物語としては面白い。


 後味が悪くならない範囲で、どのような復讐があれば効果的か。


 どんな形の復讐が、私を最も動揺させるか。


 それは……。


 「元カレが、自分および夫よりも大物になっていること」


 振られた悔しさを糧に努力を重ね、社会的に成功し、いずれ自分たちを苦しめる存在になっていたりしたら。


 上杉くんに当てはめてみた。


 私に振られた悔しさを糧に勉学に励み、司法試験に合格し、晴れて弁護士になり。


 いずれ大物弁護士として社会に名をとどろかせる。


 たとえばいつの日か、葛城さんが犯罪事件を起こしたとして。


 こちらが加害者となり、被害者の弁護士には上杉くんが付く。


 上杉弁護士の弁護が上手くいき、私たちは最高裁敗訴……。


 こんなことが実際に起こったら、まさに最高の復讐形態かもしれない。
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