魅惑への助走
 どうしよう、こんな所で見つかってしまった。


 事務所の様子を覗き見していたのがバレバレ……。


 もう手遅れとはいえ、逃げたほうがいいかとも思ったのだけど、


 「明美ちゃん、顔色変だよ。熱中症じゃないの?」


 おでこに触れられた。


 「まずいよ。このままだったら倒れちゃう」


 「いえ、平気です。もう帰りますから……」


 しかし体が言うことを聞かない。


 目の前も薄暗くなってくる……。


 「だめだよ。とりあえず事務所に行こう。少し横にならないと」


 事務所って……、SWEET LOVEのオフィス?


 それはまずい。


 松平社長とか、……それより佐藤剣身がいる可能性がある。


 万が一遭遇でもしたら……!


 「ちょうど今、社長も剣身くんも取材で出かけているから。あとはバイトの子が数人留守番してるくらい」


 私の心の声が聞こえたのだろうか。


 かなり意識が朦朧としてきたので、私は榊原先輩に肩を抱えられ、久しぶりに
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