魅惑への助走
 「せっかく再会したことだし、近々ゆっくり飲みながら話でもしたいね。連絡先変わったかな? 教えてくれたら後ほどメールしようかな」


 まずは家に帰って、熱中症の回復に努めるのが第一……と、榊原先輩はタクシーを呼んでくれて、私を帰宅させようとした。


 「先輩……」


 話したいことはたくさんある。



 ただし軽度とはいえ熱中症から回復したばかりの身では、ソファーに座っているだけでもつらく。


 今日は家に帰ってゆっくり横たわっているしかないと判断された。


 「先輩、一つだけ聞いておきたいことが」


 体力を振り絞って尋ねた。


 「……」


 表情からして、先輩は私が言わんとしていることを察しているようだ。


 「佐藤剣身……。あの人はどういうきっかけでSWEET LOVEに現れ、専属男優となったのですか」


 「……オフィシャルサイトからプリントアウトした、オフィス周辺の地図を手にこの事務所に現れた。元カノにここを紹介されたとの話で」


 榊原先輩は、言葉を一つ一つ選びながら説明しているようだ。
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