魅惑への助走
 「元カノに紹介された……ですか」


 確かに私は、別れる直前に上杉くんに言い放ったことがある。


 私がAV制作会社に勤務していたことを咎めるような発言をしたので、「文句があるならAV男優にでもなってみなさいよ!」的なことを。


 その一言がきっかけなのかどうかは不明だけど、まさか本当にAV男優になるとは。


 「最初は私も困惑したし、丁重にお引取り願おうと松平社長も考えていた。何しろAV業界に関する予備知識もほとんどないのみならず……、過去の女性経験もほとんどなかったから」


 「なのになぜ、」


 「帰らせる気満々で、社長が形だけの面接をしていた時だった。急に社長の気が変わったの」


 「何か……、社長の気持ちを変えるきっかけがあったのでしょうか」


 「履歴書に書かれている志望動機があまりに嘘っぽいから、改めてそれについて尋ねたら……。剣身くんこんなこと口にしたのよね。見返してやりたい、って」


 「見返す?」


 「元カノを見返してやりたい、って」
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