魅惑への助走
 松平社長と榊原先輩が、上杉くんは私の元カレであると気付いたのは。


 上杉くんがSWEET LOVEに持参した履歴書だった。


 履歴書には生年月日に学歴、所有する資格などが列挙されているけれど、出身地そして出身高校と大学の学部を見て、「もしや?」と察したらしい。


 しかも私と同い年……。


 出身地も高校も同じで、都内の名門私立大学の法学部を卒業後、司法試験に臨むも失敗を重ねている……と記された履歴書により、同一人物であると判断するに至ったようだ。


 「元カノを見返してやるために、あえてうちの事務所に?」


 社長の問いに対し、上杉くんは否定しなかったという。


 「だからってAV男優になってもいいと?」


 女性経験も私だけ、特に女が好きなわけでもない初心者が、人前で裸になって性行為を晒す仕事など絶対無理だと思われた。


 だけど上杉くんは譲らなかった。


 ラストチャンスと賭けて受験した司法試験が、またしても不合格。


 貯金も底を尽き、生活に行き詰っていたという背景もある。


 だからってAV男優に……?


 私も到底受け入れられない。


 (それだけ私への恨みが、大きいということ……?)
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