魅惑への助走
***


 「だから、ダメ男はだめなの。俺様S彼ハイスペック男じゃないと」


 ダメダメとダメ出しされた、近所のファミレス。


 携帯小説サイト「magic theater」の担当編集者・梨本さんとのミーティング。


 新作序盤のプロットを提出したところ、たちまち却下。


 国家試験に挑むも不合格続きのヒーローを慰めるヒロインの描写。


 わたし的にはよく書けたと思ったのだけど、このサイトのコンセプトには合わないみたい。


 男は常に、「強く逞しく」あらねばならず、弱音を吐きまくるなんて許されない。


 男女平等が謳われて久しく、女子が強くなるのと反比例して男子が軟弱化し、「草食系」などと評されるようになったこのご時世。


 思ったより男は強くないし、女のほうがよっぽど逞しいと実感することも多々ある。


 それが現実にもかかわらず、携帯小説に求められるヒーロ像は、男尊女卑もびっくりな俺様S彼。


 そんな男が現実にいたとしても、私だったら絶対に恋に落ちない!


 セクハラ・モラハラ・パワハラ男として絶対に訴えてやる。


 なのにそのような男を相手役に据えて、恋愛小説を書き続けなければならない。


 未だにギャップに戸惑ってばかりの私。


 いったいいつまで……?
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