魅惑への助走
 ……アダルトビデオにはあるまじきバッドエンドで、複雑な展開。


 榊原先輩の描く込み入った世界観を、佐藤剣身は巧みに演じ切っていた。


 一時間くらいの長編、夢中に見入ってしまいあっという間にエンドロールが流れ始めている。


 カラミのシーンはもちろんだけど、それ以外のストーリーも。


 全く演技経験のないはずの上杉くん……佐藤剣身は違和感ない演技を見せていた。


 SWEET LOVEの売りであるカラミ以外のストーリー部分も、演じる男優側には必ずしも好評だったわけではない。


 かの片桐などは、性行為シーン以外の部分はくどくどして面倒くさいと公言していたし。


 つまらないドラマでは視聴者も早送りして飛ばしてしまい、カラミのシーンしか見てもらえない。


 AVの本来の目的であるカラミの場面以外を、このように自然に演じ、カラミに至るまでのシーンをじっくり積み重ねてくれる。


 これほどSWEET LOVEの作品にフィットした男優は、後にも先にも佐藤剣身以外に存在しないと確信した。
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