魅惑への助走
 「時間がないから、女性はスーツでいきましょう」


 お見合いに相応しい、シンプルな色合いのスーツを引っ張り出し、りらさんに着用してもらった。


 胸が大きいりらさんなので、胸元がちょっときつく感じられたものの、サイズは何とか大丈夫だった。


 追加で撮影されることとなったお見合いのシーン。


 やる気のない主人公はけだるい表情で、しかも遅刻して待ち合わせ場所に現れる。


 すると相手はすでに着席していて……なんとかつて身を焦がす情熱を感じたあのヴァンパイアにそっくり!


 彼がまるで生まれ変わって再び現れたような錯覚……運命を感じ主人公は驚きを隠せない。


 と同時に……もう誰ともあれほどまでに情熱的な夜は味わえないとあきらめきっていたはずなのに、新たな恋の予感を手にして胸がときめく……。


 そんなシナリオをりらさんは、見事台詞なしで演じきってくれた。


 同時に佐藤剣身も、肌を晒すカラミのシーンでなくとも、スーツ姿で十分に存在感を示してくれた。


 予定よりは長引いたものの、撮影は今度こそ無事終了。


 そのままSWEET LOVE内会議室へとなだれ込んで、軽い慰労会を開催するパターンも以前と変わってない。
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