魅惑への助走
 ……久しぶりにSWEET LOVEの撮影現場に立ち会って以来。


 私は熱に浮かされたように、それから何日間もぼーっとしたまま過ごしていた。


 現場の張り詰めた雰囲気がとても刺激的で、撮影が終わった後の私は「燃え尽き症候群」みたいになっていた。


 葛城さんが長期間出張で不在だったのが幸いで、一日中家でぼんやり過ごし、お腹がすいたら徒歩圏内のコンビニに食べ物を調達に外出する。


 それ以外はほとんど何もしないで、ソファーやベッドで横たわってばかりいた。


 それでも時間はいつの間にか流れていく。


 何もしなくても昼は過ぎ、夜が訪れやがて朝が来る。


 日付が一日ずつ動いている。


 窓から覗き込む月の形も、毎日少しずつ変わっていく。


 何も残すことができずにいるうちに、時間ばかりが浪費されていて私はますます焦る。


 なのに行動を起こせずにいた。


 そろそろ何とかしなくては。


 私の中で、一つの決断を下さなければならない日が迫りつつあるのを感じている。
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