公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「え……?」と、もたせかけていた顔を上げて、琥珀色の瞳を見る。
アクベス侯爵は広場で出会った初老の貴族。
あの人がエリオローネ家の領地の半分を支配しているとは、どういうこと?
すべての領地を隣国に奪われたと思っていたので、目を瞬かせて彼の次の言葉を待つ。
ジェイル様は私の反応を窺っていて、もったいぶるような間を空けてから、やっとその理由を教えてくれた。
「アクベス侯爵は、辺境伯に加勢して、敵の侵攻を半分で食い止めた。アクベス侯爵がいなければ、すべてを奪われていたことだろう。しかし、辺境伯は戦死し、お前たち一族の所在が不明となったため、アクベス侯爵は辺境伯領の半分を現在まで管理している」
「そうなの……。それなら感謝しなければいけないのかしら」
「表向きにはな」
その言い方だとまるで、真相は違うと言っているように聞こえた。
ニヤリと口の端を上げ、続きを聞きたいだろう?と言いたげな顔をしている彼。
しかし私は目を逸らし、広く逞しい肩にまた頭を預けて青い海を眺める。