公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
その台詞に聞き覚えがある気がして記憶を探ったら、それは私が言った言葉だった。
『私があなたに惚れる必要はないの。あなたを私の虜にさせたいのよ』
『読めたぞ。俺の心を奪って操り、ゴラスの政治に介入させようとしているのだな?』
執務室に入ることを許された日、服を脱げと言われる前に、彼とそんな会話を交わしていた。
やり返されたといえる状況に、ムッとして彼を睨んだが、フッと笑われただけで効果はない。
「海を見ろ。先ほどのように無邪気に笑え」と命じられ、顔を強引に窓に向かされた。
海を見せられたままで抱きしめられ、彼の肩に頭を預ける形となる。
「辺境伯の領地は、プリオールセンという地名で呼ばれている。知っていたか?」
「いいえ」
「己の領地名も知らぬとは、哀れだな」
「元領地よ。今は他国のものでしょう?」
「ああ」と頷いた彼は、その後に声を低くして付け足した。
「プリオールセンの半分は、隣国が支配している。もう半分は……辺境伯領と領地を接していたアクベス侯爵が、領地を拡大する形で取り込んだ」