公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

八人掛けのダイニングテーブルには真っさらなクロスがかけられて、一番奥の上座にジェイル様が座り、角を挟んだ隣には私。他は空席だった。


この時季は例年、彼の両親と兄弟たちがやって来て椅子は埋まるそうだが、今年は彼の命令で家族はこの屋敷に来ないそうだ。

それは私を住まわせているから。

辺境伯の娘である私の存在を、ジェイル様はまだ他の貴族に知られたくないみたい。

しかし、私に貴族令嬢が身につけるべき知識を与えているところをみると、いつかは社交界に出すつもりでいるようだ。

それはきっと、灯台内で彼が垣間見せた『辺境伯領を私に取り戻させる』という狙いに繋がっている気がしている。

あれ以降、彼の思惑に触れる機会はないけれど……。


給仕の使用人やオズワルドさんに見守られて、デザートナイフとフォークを静かに動かしていた。

食事のマナーも教え込まれたことのひとつで、銀製のカトラリーを正しく操って栗のタルトを口にする。

美味しいけれど、贅沢に対する罪悪感は健在で、食べることに苦痛を感じている。

それでも食べなければ太れない。

痩せすぎだと言われ、この身にもう少し肉をつけることも、ジェイル様に課せられたことだった。

< 126 / 363 >

この作品をシェア

pagetop