公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
鼓動はいくらか落ちつき、呼吸も平常に近いが、まだ頬の赤みは引いていない。
どうせ、からかうのでしょう?
こんな私が恥じらうのか、と。
琥珀色の双眸と、視線を合わせることができない。
偉そうに組んでいる長い足のブーツの紐を見つめて心構えをしていたら、予期せぬ真面目な声を聞いた。
「まだ痩せ気味だが、ここまで肉がつけば合格としよう。食事に苦痛を感じるお前が、よく頑張ったな」
食べて褒められるとは、ゴラスではあり得ないこと。おかしな気分にさせられる。
けれど、頑張ったという評価はその通り。
ひとり分の食事を減らしもせずに完食するのは、私にとって大変な作業。
三食の他に、夕方にもお茶と菓子が出されるし、寝る前にも食べろとドライフルーツの瓶を渡されている。
瓶の中身の減り具合は、ときどきジェイル様にチェックされるから、怠るわけにいかなかった。
満腹になれば、孤児院の子供たちへの罪悪感に襲われるというのに……。