公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
そこに愛があると気づいても

◇◇◇

王都は冬でも雪が降らないらしい。

一年が終わろうとしているこの季節、ゴラスはきっと冷たい雪に地面が覆われていることだろう。

王都は南、ゴラスは北。馬車で丸二日もかかる距離の開きは、冬景色も随分と違うものなのね……。


ディアナ嬢を罠にはめた日から、二カ月ほどが経っていた。

今夜はいよいよ、アクベス侯爵の娘、ルイーザ嬢との対決の日だ。


光沢のある深緑色のイブニングドレスに身を包み、プラチナブロンドの結い髪を真紅のバラで飾った私は今、王城にいる。

この時期に毎年催されるという宮中晩餐会に有力貴族のみが招かれ、私はジェイル様の同行者ということで、特別に参加を許してもらっていた。


今は広々とした晩餐室で、会食の真っ最中。

金細工で飾られた柱や天井に、眩いシャンデリア。

精緻な細工を施した美術品のような調度類に囲まれた豪華絢爛な部屋は、私には居心地が悪い。

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