公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

真っ白なクロスをかけたテーブルは横に長く繋がれて、四十名ほどの貴族が向かい合わせにテーブルを囲んでいる。

子爵令嬢を名乗っている私はこの中の誰より身分が低いので、国王の座る席から一番離れた末席を充てがわれていた。


初めてお会いした国王は、意外にも温和な人柄で、おっとりとした印象を与える垂れた目に、顎が二重になるほど脂肪を蓄えた、二十九歳の青年だった。

到着時に挨拶したときの感じからすると、良く言えば優しげで、悪く言えば頼りなさそう。

騙されやすそうにも見えて、国の全権を握る人物としての威厳は足りないが、国王の側の壁際に控えるふたりの近侍は眼光鋭く、頭も切れそうだ。

国王の資質に欠けるところがあっても、頼もしい周囲の人間に支えられているから、平和の中で玉座に座っていられるのだろうと解釈していた。


その周囲の人間には、ジェイル様も含まれる。

国王の政務の補佐をしていると、彼はかつて私に話したが、補佐ではなく国政の大半をジェイル様たち有能で有力な貴族が動かしているのではないかと推測していた。

おそらく国王は、周囲が決めたことに頷いて押印するだけなのではないかと……。


昨夜、今日のことを打ち合わせたジェイル様は、国王にさえも私の本当の素性を話さずとも問題はないと言っていた。

それはこういうことなのね。

彼は臣下でありながら、発言力は国王よりもきっと上。

もし嘘がバレたとしても、うまく言いくるめられる自信があるのだろう。

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