公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ゲルディバラ伯爵は、ゴラスの民を生きるのも難しいほどに苦しめている。
その悪政ぶりを議題として議会に提出すれば、諸侯のサインの入った意見書なるものをすぐに作成してもらえるのではないか……そう考えていた私だが、そんなに簡単に進むものではないらしい。
根回しが必要だと、ジェイル様は以前、私に話してくれていた。
大変なのは議会よりもその根回しで、かなりの時間と労力を要することみたい。
議会に出席する権限のある男性貴族の一人ひとりと、個別に交渉の場を設け、こちらの意図を説明し、賛同してくれるように働きかける必要があるそうだ。
中にはこれを利用して、オルドリッジ家との交易条件を有利なものに変えようと取引を持ちかける貴族もいるらしく、この前、オズワルドさんが厳しい顔をして私に苦情を言ってきた。
『あなたの望みを叶えるために、オルドリッジ家は損害を被っています。ジェイル様がどれだけの苦しみの中にいるのか、分かっているのですか』