公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

「妻にするには、クレアは心が綺麗すぎる。俺の側には置けば、お前を苦しめるだけだ。争いごとに巻き込みたくない」

「え……?」


驚いて彼の肩に預けていた頭を持ち上げ、目わ合わせる。

綺麗な心など持ち合わせてはいないけれど、引っかかったのはそこではない。

妻にする気がなくなったのは、利用価値がないからではなく、私を思い遣ってのことだという言葉に聞こえて、目を瞬かせていた。


すると彼は、私の額に軽いキスを落とす。

思わず赤くなった私を見てクスリと笑い、こんな企みごとを打ち明けてくれた。


「宮中晩餐会で、本当はーー」


私がジェイル様を愛していることに、彼はとっくに気づいていたそうだ。

マリオット伯爵家の舞踏会では、彼と踊るルイーザ嬢に私は苛立っていた。

ディアナ嬢を罠にはめたときには、彼の寝室に立ち入ることを不自然なほどに拒んでいた。

それらは明らかに、彼を意識している証拠だ。


かつてジェイル様は、『クレアを俺の虜にして操ってやる』と言った。

これまでそうなるように仕向けてきたのだから、観察していれば、私の心の動きなどお見通しだったということだ。


しかし、私自身が彼への愛情を認めようとしない。

だから晩餐会では、私のことも策にはめてやろうと企んでいたそうだ。

彼が毒を口にすれば、私は自分の心と向き合わざるを得ないはず。

不安や心配といった感情の波の中に、きっと愛情を確認するだろうと期待して……。
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