公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
つまり、あの晩餐会で彼が企んだのは、アクベス侯爵とルイーザ嬢を罠にはめることだけではなかった。
私に愛を認めさせ、妻になりたいと言わせることも目論んでいたということだ。
結婚を望みはしないが、ジェイル様への愛情に気づいたことは事実。
私も罠にはめられたことを理解して、「だから作戦を教えてくれなかったのね」と溜め息交じりに呟けば、彼はニヤリと笑ってみせる。
それから笑みを消して「お前に関しては、ことがうまく運ばなかったが」と、残念そうな声色で付け足した。
「どういうこと?」
「想定外だったことは、ふたつある。ひとつはお前の反応だ。毒を含めば、心配されるだろうと予想していたが、自分が死んだ方がマシだと怒るとは思わなかった。お前は、愛しい者のためなら命を惜しまないのだな……」
なにを今更……と思い、眉を寄せて彼を見る。
私が死をも覚悟の上で、ゴラスに視察に来た彼の馬車を止めたことは、知っているはずなのに。
大切なものがあれば、私は命を惜しまない。
それは伝わっていなかったのだろうか?
それとも、愛するように仕向けたと言っても、彼の思う愛情とは、命を賭けるに値しない、薄っぺらな感情のことを指すのだろうか?