公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
黒く淀んだ争いと聞いて、アクベス侯爵一家を罠にはめた晩餐会を思い出す。
辺境伯領を取り戻すとなれば、またアクベス侯爵と一戦を交えねばならない。
それもあの程度のことでは済まず、もっと大きな謀の中で、他の貴族との関係も気にしながらの戦いになるに違いない。
確かに心は、今よりもっと汚れてしまいそうな気がする。
しかし、それでもいいと私は深く頷いた。
「ええ。覚悟の上よ。どこまでもあなたについていくわ。たとえこの心が、修復できないほどに黒く汚されても」
「よく言った」とニヤリと笑って褒めてくれてから、彼は急に瞳を艶めかせ、甘い色香を全身から溢れさせる。
「正式な婚姻の手続き後まで、待ってやれないぞ。今宵、お前の純潔を散らす。覚悟しろ」
そう宣言した彼に『望むところよ』と伝えたかったのだけれど、唇が重なり返事ができなかった。
深く濃密に舌を絡めて、私を味わう彼。
その手は情欲のままに私のナイトガウンと寝間着を剥ぎ取る。
彼自身も一糸纏わぬ姿となり、シーツの上で体温を分かち合った。