公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
驚きを隠せずに目を見開いているのは、ゲルディバラ伯爵だ。
私と公爵に視線を往復させて、「なにもこんな卑しい浮かれ女を連れていかずとも……」と、独り言として文句を呟いていた。
浮かれ女とは、ひどい侮辱ね……。
私はまだ生娘だ。
嫌らしい男たちの要求を可能な限りに跳ね除けて、これまで与えた報酬の最たるものは、服の上から胸を一度だけ触らせるというもの。
娼婦になる気はないから、生肌には決して触れさせてこなかった。
否定したい気持ちはあるけれど、先ほど公爵に黙っているように言われたばかりなので、私は睨むだけで我慢している。
するとそこに、「お待ちください!」と若い女の声がして、鮮やかな橙色のドレスを着た見知らぬ娘が現れた。
赤茶の縦巻きの髪を揺らして、肩で息をしているところを見ると、どこかから走ってきたようだ。
「エロイーズ!? 供もつけずにひとりで出てきたのか。はしたないことをするな!」