公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
今度は背中から抱きしめられている。
彼の左腕は私の胸の前にあり、衣服を通しても、その逞しい肉体が背中に感じられた。
またしても始まった動悸と戦う私だったが、ゲルディバラ伯爵に忌々しげに睨まれて、気持ちはすぐにそちらに移る。
思わず睨み返したら、耳元に「なにも言わずにじっとしてろ」と艶のある声がして、それから彼は伯爵に向けて口を開いた。
「ゲルディバラ伯爵、先ほど貴公からの土産の一切をお断りしましたが、ひとつだけもらい受けたい品があります」
突然、土産の話をされた伯爵は、私を睨むのをやめて目を瞬かせ、その後に恭しく揉み手を始めた。
「それはもう喜んで。なにをご用意いたしましょう?」
「いや、用意は必要ありません。土産とは、この女のことですから。侍女として我が屋敷で使おうと思います」
私の望み通りの言葉と、クスリと笑う声を聞かされ、私は安堵の息をつく。
第一段階は成功よ。
彼が連れていくと言わなければ、この先の計画を進められない。
私はゲルディバラによって牢に入れられ、ゴラスを変えられないままに、命の終わりを迎えたことだろう。