公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ゲルディバラ伯爵は、慌てて娘を止めようとする。
「なにを言う。わしの娘が侍女などと、許さんぞ」
「お父様、お許しください。わたくし、公爵のお側にいたいのです。そのためでしたら、働くことも厭いません」
普段の彼女はきっと、父親に意見したことがないのだろう。
自分の意思を伝えながらも、父親を恐れて声も体も震わせていた。
「エロイーズ!」と怒鳴られて怯えても、必死に「お許しください」と懇願する彼女。
やがてゲルディバラ伯爵は諦めたように大きく息を吐き出し、娘ではなく公爵に言った。
「仕方ありませんな。どうぞエロイーズを侍女としてお連れください。ただし、いずれは妻にするとの約束はもらいませんと。それまでは決して手を出さぬと、父である私にーー」
伯爵の話を遮るかのような、高笑いが辺りに響いた。
それはオルドリッジ公爵の声で、どこか嘲るような響きのある笑い方だ。