公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
数秒の後に、訝しむ伯爵に呼びかけられ、彼はやっと笑いを収めた。
「これは失礼。喜劇を見せられた気分がしたものですから」
「き、喜劇ですと!?」
「ゲルディバラ伯爵、申し訳ないが、貴公の娘を連れていく気はない。妻にもしない。側におくなら美しい女の方がよいと、男の誰しもが思うことでしょう」
目を見開いて驚いた後に、ゲルディバラ伯爵の顔が真っ赤に染まる。
浮かれ女呼ばわりした私よりも、愛娘の容姿が劣ると言わんばかりの公爵の言い方。
それに激怒しているようだ。
しかし立場上、訂正しろと詰め寄ることができないようで、歯ぎしりするばかり。
エロイーズ嬢は両手で顔を覆って、シクシクと泣き出してしまった。
かわいそう……とは、これっぽっちも思えない。
傷ついた彼女に同情するのではなく、侮蔑の思いが湧いていた。
孤児院の子供たちは、生きるために日々食料確保に追われているというのに、恋に浮かれ、それが破れて泣くとは、なんてくだらない。
苦労を知らないお嬢様は、呆れるほどに心が弱いのね……。