公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
そして王城で仕事をしている彼の帰宅時間は、大体いつも二十時頃。
今から二時間ほど後のことになる。
調理人のティータイム中に料理をしなければ止められてしまうので、作る時間が早すぎるという指摘は覚悟の上。
この平べったい魚……舌平目にかけるソースは、トマトがたくさん置いてあったから、トマトソースだと思い込んでしまった。
ホワイトソースにしなかったことについては、「間違えてごめんなさい」と謝罪の言葉を口にした。
私より二十ほど歳上に見える調理人は、苦情をたっぷりと言った後に、焼き上がって間もないパンを指でつついている。
これについても、文句があるようだ。
「パンだって、予定していたものと違いますよ。なんで捻ってあるんですか」
捻りパンは、ゴラスでは一般的。
髪を編み込んだような形にしてある理由は、少ない生地でも大きく見栄えがするからで、貧しい庶民の知恵といったところだ。
王都では丸いコロンとした手の平サイズのパンや、四角いパンをスライスして食べることが多いみたい。
それについては、理解していながらわざと捻りパンにしたので謝らない。
思惑があってのことだから。