公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

ジェイル様の寝室と執務室には、立ち入り禁止だと言われている。

それなのに今、彼の方から私を叱るために執務室に呼び出してきた。

勝手に料理をするなと注意しても、私なら二言三言、言い返してきそうだと、これまでの関わりから予想できるはずで、使用人たちのいる場での口論は避けたいと、彼は考えたことだろう。

それは口論の末に私が余計なことを口走り、辺境伯の娘であるという素性がバレることを懸念しているためだ。

彼には彼の思惑があって、私の素性を隠したがっているのは、分かっていた。


ジェイル様の心を上手く読み取り、操ったつもりでいる私は、僅かに口角を上げて、二階の北東の角にある執務室までやってきた。

照度を抑えた廊下のスコンスに照らされるのは、浮き彫りの二重枠で飾られた一枚板の立派なドア。

それを初めてノックすると、「入れ」という低い声が中から響いた。


いつものようにオズワルドさんが開けてくれるのではないことも、予想通り。

近侍の彼はジェイル様の食事中も後ろで待機していて、主人の食事後にやっと自身も別室で食事となる。

オズワルドさんは今頃、私の手料理を口にしているところだろう。


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