公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
椅子から立ち上がってドアを開けたら、晩餐の給仕係のメイドがひとり立っていた。
たしか彼女は私よりひとつかふたつ、歳上だったはず。
しかし、そばかすを鼻の付け根に散らしたその顔は、私よりもずっと幼く純真そうに見える。
大人になっても綺麗な心のままでいられるのは、これまで人の悪意に触れずに幸せに暮らしてきたせいなのかもしれない。
彼女の用向きは聞かずとも分かっているけれど、「どうしたの?」と首をかしげてみせた。
「ジェイル様がクレアさんをお呼びになられています」
「そう。どこへ行けばいいのかしら?」
「執務室です」
「分かったわ」と答えると、メイドは一礼してから立ち去った。
彼女の姿が視界から消えて、無人となった廊下に歩き出しながら、私はひとり、ほくそ笑む。
ここまでは計画通りね……。