海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
それからは全然箸も進まず、


とにかく『何か話さなきゃ』っていう焦りで色々喋ったけれど、一体何を話したのか、記憶は曖昧で、


そんな調子だったから、もしかしたら空回りして、訳の分からない事ばかり話してしまったのかもしれない。


時々冷静さを取り戻すたびに、自己嫌悪に陥った。



青山先生と一緒にいて気付かされた事は、3年間の女子校生活で、すっかり男性の免疫が無くなったという事。


元々、中学生の時に仲の良い男の子がいなかったから、中学卒業と同時に音信不通になっていたし、


高校に入ってからよく話した男性と言えば、相葉先生くらい。


しかも、相葉先生と話す時はドキドキしながらも、学校生活の中で共通する話題が沢山あったから、話題に困った事が殆どなかった。



でも、今は違う。


相手はそんなに深く関わっていない男の人で、しかも全く違う場所で、全く違う生活をしてきた人。


情報量は、限りなくゼロに近かった。


その相手と、新しい関係を築いていかなければいけない状態だって事は十分理解していた。


何を、どうするべきか分からないまま、


『一緒にいてつまらない子』


それだけは思われたくない一心で、うまくきっかけが掴めないまま必死にもがいていた。




しばらくして、一通り食べ終えた青山先生から、


「行こうか。」

そう言われて、私達はお店を出た。



「なんか付き合わせちゃって悪かったなぁ。」


申し訳なさそうにしている青山先生を見ていると、却って悪い事をしてしまった気がした。



「いえ、私の方こそすみません。」


私達はお互いに気を遣いながら車に乗り込み、青山先生の運転で夜の街へと走り出した。
< 262 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop