海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
会社では、松井さんが母と同じような様子だった。


松井さんは相葉先生の結婚の事を知っている。


ずっと私の事を見ていた分、


『仕事はちゃんとやってるけど、前よりおかしい。』


そんな風に思っているようだった。



「河原、ちゃんと寝てるの?なんかずっと顔色悪いよ。」


向かいの机に座る松井さんが、じっと私を見つめる。


私の心の中まで見られてしまいそうで、私はすぐに目を逸らした。



「大丈夫ですよ。夜更かしのせいかもしれないですけど、元気です。」


私は両手をパタパタと左右に振って、笑顔で答えた。



「そんなに遅くまで起きてるの?」


「んー…まぁ、その日によります。」


曖昧に答えるしかなかった。


自分でも、一体何時に眠っているのかよく分からない。



「夜更かしもいいけどちゃんと寝なよ?それに、お昼ご飯だってよく残してるじゃん。」


会社へは大抵、母が作ってくれるお弁当を持っていく。


全部食べたふりをする為に、半分くらい食べては残りを会社で捨てる事が多かった。


そんな様子に、一緒に食事をしている松井さんが気付かない訳がない。



「今、ダイエット中なんです。全部食べなかったらお母さんがうるさくて。」


私は困ったような表情を浮かべて笑った。


「だってもう痩せたじゃん。まだやるの?」


松井さんは席に座ったまま、私の首から下の見える部分をまじまじと見つめた。


「見えない部分がすごいんですよ。」


私はそう言ってごまかした。


もしかしたら松井さんは、


『相葉先生の結婚の事を、未だに引きずっているんじゃないか』


そんな風に感じ取っていたのかもしれない。
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