To be alive again


「どうした?」

翠の様子を気にして、彼はいつも通りに頭を撫でてくれる。

頭を撫でられるのはいつもなら嬉しいのに、なぜか素直に笑い返せない。

先生、なぎささんって…だれ?

女の人?

聞いたら…気持ちが晴れるのかな?

それで…帰ってきた返事がもっと嫌な気持ちになるようなのだったらどうするの?

悶々と嫌な事が頭の中を巡る。

彼の事を何にも知らないのだと、思い知らされる気がして。

ちらりと、運転をしている彼の表情を盗み見る。

いつもの涼しい表情だ。

気にしなくても…いいのかな…?

付き合ってから彼に女の影を感じたことなんて一度も無かった。

彼はいつも翠と過ごしてくれるから。

彼の部屋には、彼の痕跡しかない。

ちらりと運転している横顔を見る。

この人は、きっと、翠を不必要に不安がらせることをしない。

もしも何かあったとしても、それはもうちゃんと過去の事になってるに違いない。

 『君の事本気だから』

信じるならば、しっかりと翠に向けて言ってくれた健介さんのこの言葉を。

彼も健介さんも、堂々と話題に出していたんだから、気にしなくていいのだ。

そうだ。

きっとそう。

そういうことにしよう。

翠は小さく頷いた。
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