To be alive again
そんな瞳するなよ、と思う。
真一郎だって、雨の日は帰したくない。
雨の日は翠を一人にしたくない。
雨の日を嫌がる理由も…知っていたから。
「帰らないと親も心配するだろ?」
真一郎の言葉に不満げに口を尖らせて、翠はうつむく。
翠だって親が心配するとかそういうことは、判ってるはずだ。
「雨、だいぶ小降りになってるし、そのうち止むだろ」
ちらりと上目遣いで真一郎の様子を伺って、今日は駄目なんだと諦めたらしくて翠は小さく頷いた。
「ん、いい子」
真一郎は小さな子供をあやすように翠の頭を撫でてあげて、胸にぎゅっと抱きしめる。
切ったばかりの短い髪はくしゃくしゃ撫でるのに丁度いい。
この間までの長い黒髪も好きだったけれど、明るい色でふわふわの髪は子犬みたいな感じがして悪くない、と思っていた。
頬を両手で包んで上向かせると、涙で潤んだ瞳。
翠の唇がわずかに動くのを遮るようにキスをした。
帰りたくない、真一郎の理性をあっさり溶かしてしまうその言葉が、唇から零れ落ちてこないように。