To be alive again
「時々ってお前、何度も聞いてたのかよ」
「…ごめんなさい」
「ずるいな自分だけ」
自分だけ授業聞きに来てるとかずるい。
思うのはそんなことだった。
翠は会わなくなってから何度か物理実験準備室に来たけれど、いつも真一郎を待たずに帰っていた。
会わなくなってから真一郎には、翠の姿を見る機会は数えるほどしかなかった。
翠は3年次に理系科目を履修していなかったから、教室移動で会うことも無かった。
真一郎は2年生の担任だったから、廊下ですれ違うことも無かった。
全校集会の時に探しはしたけれど、見つけた翠と目が合うことは無かった。
声を聞く機会など、姿を見る以上に無かった。
それなのに、彼女は壁越しに授業を聞いていたなんていうのだから。
「うわー…俺ストーキングされてたとか気づいてなかったわ」
「ス、ストーカーなんてしてないもんっ
ちょっと…授業の間廊下に座り込んでこっそり声聞いてただけだもん」
「十分ストーカーだろ…
だからお前、俺の授業把握してたんだな?
バレンタインの時とか」
「…」
「コーヒー温かかったわけだよなー
俺があの時間授業無いの知ってて置いてったんだから
…知ってて、待ってなかったんだな」
あぅ、と翠は小さく声を漏らして、様子を伺うように俺を見る。
「先生…怒った?」