ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


「好きだよ、瑠奈」


優しく囁き頬に張りついていた髪を耳にかけられたと思うと、目の前に想史の長いまつ毛が。

反射的に目を閉じる。と、温かい何かが唇に触れた。それはとても柔らかくて、雨のせいかしっとりと濡れていた。

さまよい震える手で、想史の制服をつかむ。すると、ぎゅっと抱きしめられた。どう息をしていいかもわからない。だけど全然、嫌じゃなかった。むしろ幸福で、息が止まりそうだった。

私、想史とキスしてる……。


「ずっと一緒にいよう」


唇を離した瞬間にそんなことを言うものだから、うっかり泣きそうになってしまった。

当たり前だよ。私はあなたと一緒にいるために、こっちの世界に来たんだよ。

全部捨ててきた。両親も、友達も、朔と育った家も、朔との思い出も……朔も。全部、全部。


「嫌じゃなかった?」


優しすぎる問いかけにうなずくと、再度想史の顔が近づいてくる。ゆっくりとまぶたを閉じた刹那。

──ブーッ。ブーッ。

携帯のバイブ音が、土管の中に不気味に反響した。びくりと肩が震えると、想史が離れた。


「出なよ。おばさんじゃない? 心配してるのかも」


暴風警報が出て一斉下校になったことは、学校からお母さんの携帯にメールで知らされる。もしかしたら仕事から帰ってきて待ってるのかも。


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