ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


ドキドキしたまま、バッグの中から携帯を取りだす。鳴りやまないバイブ音を放つ携帯のディスプレイを見ると、『穂香』の文字。


「どうしたんだろう」


帰る途中で何かあったのかな。不安になってすぐ電話に出る。


「もしもし?」

『もしもし? もしもし、瑠奈? 瑠奈だよね?』


は? 当たり前じゃん。そっちの携帯から私の番号を選んでかけてきてるわけでしょ。私以外が出るわけないじゃない。一瞬いたずらかと思ったけど、声は間違いなく穂香だ。


「そうだけど」

『瑠奈! ねえ、今いったいどこにいるの?』


叫ぶような穂香の声が、時々ぷつぷつと途切れる。台風のせいで電波状況が悪くなってる? そんなことあるのかな。


「えっと……土管の中?」

『ふざけないでっ!』


ええ。真面目に答えたのにどうして怒られなきゃいけないの。今日の穂香、ちょっと変。隣で想史が心配そうな顔をしているので、通話をスピーカーモードに切り替える。これで会話が筒抜ければ想史も安心だろう。


「ねえ穂香どうしたの? 何かあったの?」


そう尋ねると、電話の向こうがガサガサ言っていた。外なのかな。誰かがパタパタと小走りするような音や、機械音が聞こえる。


< 133 / 179 >

この作品をシェア

pagetop