ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
ドキドキしたまま、バッグの中から携帯を取りだす。鳴りやまないバイブ音を放つ携帯のディスプレイを見ると、『穂香』の文字。
「どうしたんだろう」
帰る途中で何かあったのかな。不安になってすぐ電話に出る。
「もしもし?」
『もしもし? もしもし、瑠奈? 瑠奈だよね?』
は? 当たり前じゃん。そっちの携帯から私の番号を選んでかけてきてるわけでしょ。私以外が出るわけないじゃない。一瞬いたずらかと思ったけど、声は間違いなく穂香だ。
「そうだけど」
『瑠奈! ねえ、今いったいどこにいるの?』
叫ぶような穂香の声が、時々ぷつぷつと途切れる。台風のせいで電波状況が悪くなってる? そんなことあるのかな。
「えっと……土管の中?」
『ふざけないでっ!』
ええ。真面目に答えたのにどうして怒られなきゃいけないの。今日の穂香、ちょっと変。隣で想史が心配そうな顔をしているので、通話をスピーカーモードに切り替える。これで会話が筒抜ければ想史も安心だろう。
「ねえ穂香どうしたの? 何かあったの?」
そう尋ねると、電話の向こうがガサガサ言っていた。外なのかな。誰かがパタパタと小走りするような音や、機械音が聞こえる。