ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


『瑠奈、俺だけど』


じっと待っていると、突然低い声が聞こえたから驚いた。これって、想史? でも、想史は今隣にいるのに。


「えっと……」

『俺だよ。想史』


どういうこと? 隣の想史を見ると、ビックリした顔をしている。そりゃそうだ。電話の向こうから、自分の声がするんだもん。


『俺の番号からじゃ出てくれないかもと思って、穂香にかけてもらった。絶対に切るなよ』


どくんどくんと、痛いほど心臓が鳴る。この声、やっぱり想史本人だ。ずっと聞いてきた声。間違いようがない。ということは、この電話はもしかして……。


『よく聞けよ。朔の状態が良くない。看護師が家族を集めろと言ってる。すぐに戻ってきてほしい』


朔。その名前を聞いて、脳裏に鮮やかによみがえる病室の光景。機械音は心電図モニターで、小走りしているのは看護師さんだ。

やっぱり、今電話をしてきているのは元の世界の想史だ。どうして並行世界どうしの電話が繋がるの? いや、それよりも。


「朔……どうしたの?」

『わからない。やっぱり原因不明。お前がいなくなった夜から、また具合が悪くなった』


私がいなくなった夜。それは朔が入院した翌日。意識を取り戻してすぐのこと。どうして? あのとき、普通に会話をしたじゃない。どうしてそんなに急に状態が悪くなるの?


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