難攻不落な彼に口説かれたら
『平常心』と心の中で唱えながら、片岡君に挨拶する私。

でも、ニコッと微笑む余裕なんてない。

片岡君と視線が合ってドキッとする。

他のメンバーには彼にしてはにこやかな顔を見せていたのに、私には無表情。

ひょっとして同級生だってバレた?

それとも……今朝の一件で恨まれてる?

「……中村さん、中村さん」

古賀さんの声が耳に届いて我に返った。

「あっ……はい!」

「今日出て来て大丈夫なのか?」

古賀さんは気遣わしげに私を見る。

「家でずっと寝てるのも辛いんですよ。働いてた方が気が楽です」

笑って答えるが、本当は少し無理をしていた。

だって、これ以上休んでみんなに迷惑をかけたくない。
「心がインフルエンザ移して悪かったな」

心というのは、古賀さんの五歳のひとり娘。
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