難攻不落な彼に口説かれたら
無理矢理笑って話をかわそうとしたが、小野寺君は私に一歩一歩近づいてくる。

「男と女がいれば、あとは何もいらないですよ」

クスッと悪魔のように笑う小野寺君。

そんな彼が怖くなって後ずさるが、壁にぶつかり逃げ場がなくなった。

これは本当に小野寺君なの?

顔を強張らせながら彼に目を向ける。

「小野寺君、何かの冗談だよね?」

今の状況が信じられなくて小野寺君に聞くが、彼は「本気ですよ」と言って高笑いした。

何か悪い夢でも見ているのだろうか?

「俺すんげー頭にきてんですよねえ。じっくり攻めて雪乃先輩を手に入れる過程を楽しんでたのに、仁の奴に横からかっさらわれて、だからもう滅茶苦茶にしても構わないかなって」

小野寺君は残忍な笑みを浮かべると、私のブラウスに手をかけた。

何とか彼を止めなくちゃ。

何か言って小野寺君の気を逸らして、そう思うのに頭の中が混乱してすぐに言葉が出てこない。
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