難攻不落な彼に口説かれたら
仁のその優しい声もどこか遠くから聞こえてくる感じがする。

身体の感覚が戻ってくると、彼の温もりを感じた。

同じ男性なのに小野寺君とは全然違う。

仁の腕の中は陽だまりのように温かい。

そう言えば、今朝彼に注意されたんだよね。

あれは本当は秀兄ではなく、小野寺君のことを言いたかったんじゃないだろうか?

でも、小野寺君のことを言われても、きっと納得出来なかったと思う。

あんなに可愛かった小野寺君が悪魔に豹変するなんて思わなかった。

思い出すだけで身体がゾクッとする。

もし仁が来てくれなかったら……。

考えるだけで怖い。

「間に合って良かった。会議が早く終わって部屋に戻ったら雪乃がいなかったから、探してたら秘書室の子が資料室に向かう雪乃と後を追う拓海……小野寺を見たって言ってて、もしやって思ったんだ」
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