難攻不落な彼に口説かれたら
フーッと息を吐きながら言うと、仁はさらに強く私を抱き締める。

「……小野寺君とは従兄って本当?」

「ああ。俺と同じで社長の甥。公けにはしてないけど、古賀さんは知ってる。昔からちょっと問題ある奴で、雪乃のこと狙ってるのはわかってたから、俺も気をつけてはいたんだ。怖い思いをさせてごめん」

「……仁は悪くないよ」

仁のスーツのジャケットをギュッと握り、彼の言葉を否定した。

居室に戻るのが怖い。

小野寺君と普通に顔を合わせるなんて出来ないよ。

そんな私の不安な気持ちが仁に伝わったのか、彼は私を安心させるように告げた。

「小野寺はきっといないから大丈夫。今後のことは俺と古賀さんで話をするから雪乃は心配しなくていいよ」

「仁……、もう少しこうしていてもいい?」

今はまだ笑顔になんかなれない。
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