難攻不落な彼に口説かれたら
広縁の椅子に座ってのんびりしていると、仁が冷蔵庫から青い瓶に入った冷酒を出してきた。

「これ生酒で、地元でしか手に入らないらしいよ」

「そうなんだ。でも、私は遠慮しようかな……」

納会での失態が頭を過る。

ちょっと興味はあるけど、また飲んで仁に絡んではいけない。

ただでさえ、八時間も車運転して疲れてるんだもん。

今夜はぐっすり寝かせてあげたい。

「納会のこと忘れられない?だったら、風味を感じさせてあげるよ」

飲まないってことは……。

「匂いを嗅ぐってこと?」

私の質問に、仁は悪戯っぽく笑って言った。

「もっといいこと。さあ、もうすぐ新年だ」

仁がチラリと壁時計に目を向けると、時計の針が12時になり、どこからかゴーンという除夜の鐘の音が聞こえた。

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