難攻不落な彼に口説かれたら
きっとお酒の味のことじゃなくて、キスのことを言いたいのだ。

何となくお酒の風味はわかった気がするけど、好きと言えるほど味わって飲んではいない。

「あれだけじゃわからないよ」

少し仁を睨みながらそう答えれば、「でも、酔わなかったでしょ?」と言って彼は笑った。

「雪乃はお酒飲むとすぐ酔うけど、お父さんはお酒飲めるの?」

「父はお酒好きだし、強いよ。ワインも飲むけど、日本酒やビールが好き」

「へえ、そうなんだ」

そんな話をしながらお土産を選ぶと、再び車に乗って東京へ。

旅館に三泊したけど、その間初詣に行ったり、近くの観光地巡りをして楽しい時を過ごせた。

仁の運転が上手くて、山梨辺りまでは起きていたのだけど、その後は眠っていたらしい。

仁の「雪乃、着いたよ」って声が聞こえて目を開ければ、そこはよく知った場所だった。
< 265 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop