難攻不落な彼に口説かれたら
「ここって……」

私はビックリして仁を見る。

「そう、雪乃の実家だよ」

仁は、私を見てニッコリ笑った。

自分の実家を見ただけで、条件反射のように身体が固まる。

「そんな引きつった顔をしない。今日はお土産渡して挨拶したら帰ろう。雪乃、ずっと疎遠のままじゃいけない。家族は大事だよ」

仁は優しく諭すように言った。

土産物屋で彼が父がお酒を飲めるか聞いてきたのは、このためだったんだ。

仁が買ったお酒は、父へのお土産……。

もう両親がいない彼が言うと、その言葉に重みがある。

自分でもこのままじゃダメだって思いながらもずっと先延ばしにしていた。

仁はずっとそのことを心配していたのだろう。

だから、ここに連れてきたのだ。

仁に背中を押され、四年ぶりに実家の玄関のインターフォンを鳴らす。
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