例えば君に恋しても
瑛士さんに私を騙す理由などあるはずもないのに
どうして私は
誰にも相談できずに
一人この真っ暗な部屋の中
鳴らない携帯を見詰つめてるんだろうか・・・
郵便受けに入った
家賃未払いの督促状
それでも信じたいバカな私は
瑛士さんと連絡がとれなくなって2週間後
私の携帯を鳴らしたのはマンションの管理会社だった。
契約者の瑛士さんと連絡がとれないから保証人の私に連絡がきたのだ。
仕方なく家賃を振り込むために久しぶりに外に出ると焼けつくような日差しが私の肌をじりじりと焦がしていく。
こんな高額な家賃を無職の私に支払い続ける能力などあるはずがない。
お財布に穴でも開いてるようにただ生きてるだけでお金が無くなっていく。
最後に食事をしたのがいつかも思い出せない。
絶望は私から全ての欲を貪るように奪い取っていく。
「あんたこれ、偽物だよ。」
訝しげに私を睨んだ質屋のおじさんを前に、もう笑うしかなかった。
瑛士さんから貰った全ての物はあの人の愛と同じで全てが嘘、偽りの塊。
とうとう
瑛士さんと連絡がとれないまま
ボストンバック1つの荷物と数百円の財産だけ持って
帰る場所も行く宛も無く
全てを失った私は深夜の遊歩道のベンチに腰をかけて
星ひとつない曇り空を缶ビール飲みながら眺めていた。