例えば君に恋しても
「この度はご多忙な中、僕たちのために足を運んで下さりありがとうございます。」
透き通るようにホールに響く声
そこにはビジネス仕様の新一さん。
きっと、私の知らない面を彼はもっとたくさん持ってる。
彼が届かぬ人じゃなかったなら、もっと沢山。
もっともっとたくさんの新一さんを知りたかった。
彼は今からこの大勢の前で婚約を発表するのだろう・・・
アパートに帰って一人になるまで泣かない
そう
決めていたはずなのに
新一さんの隣に堂々と婚約者として立てる香里奈さんが羨ましくてたまらない。
妬きもちで
嫉妬で
切なくて
込み上げる涙は
彼のためにならないと分かってるのに
それでもぽろぽろ落ちる涙。
俯いて顔を隠すと、支えるように肩を寄せてくれる仁。
「今日は集まって下さった皆さんに、市橋家の際幸をお伝えさせて下さい。」
壇上で頬笑み、みつめあう二人。
「出会いは今日のように晴ればれとしていました。
太陽のように明るい笑顔の彼女を最初に好きになり、その気持ちが本物に変わるまでに時間はかからず、まるで運命のように惹かれあい、お互い恋に落ちました。
この幸せ、必ず市橋家の栄光に繋がると信じ、僕は彼女と結婚します・・・。」
ゆっくり
壇上でみつめあう二人。