例えば君に恋しても
翌日にはお金を振り込んで、それから1週間。
携帯を握りしめたまま私は遊歩道を少し落ち着かない気持ちで歩いていた。
お金を振り込んでから今日までの1週間、瑛士さんからの連絡が一切、途絶えてしまったのだ。
何度かけても、瑛士さんの携帯は電波が届かない。
振り込んだ100万はちゃんと受け取ったのだろうか。
それとも、事故や何かに遭ってしまったんじゃないか?
思えば出張先も地名しか聞いてない。
泊まってるホテルの名前など、詳しいことは一切聞いてない私に、彼の安否を確認できる方法は携帯だけなんだ。
少しでも気分を変えたくて外に出てきたものの、瑛士さんのことが心配で余計に追い詰められた気持ちになってしまう。
自販機の向かいのベンチに腰をかけてもう一度瑛士さんの携帯に電話をかけるも、呼び出し音がなることもなく、電源が入ってないアナウンスが流れてくる。
携帯を握りしめたまま、やりきれない気持ちで頭を抱えた時だった。
「何かお困りですか?」
頭上から聞こえた声に顔を上げると、いつかこの遊歩道で100円をあげた彼が笑顔で私を見ていた。
「あなた・・・この間の・・・」
「この間はありがとうございました。
顔色悪いみたいですけど、大丈夫ですか?」