君の向こうのココロ
ふと理緒を見ると、写真を片付けていた。


そして黙々と携帯の画面に見入っている。


僕のココロはシュンとする。


「この恵子さんって方は、結婚してる。沙空さんは先輩がいた…。」


「そうだね…。」


理緒の質問に僕はつれない、返事をしてしまう。


「奪ってばっかり、この人…。」


理緒がつぶやいた。いつしか鼻もすすっていて、しゅ~っと音を立ててしぼんでしまうように、肩を落とした。


「奪う…確かにそうだよね。聞こえは悪いけど…。」


「メール見たところ、まだ続いてます。両方ともに…。それに機種変したのは6月上旬ですから…。これ新しい情報として受け取っていいんじゃないでしょうか…。」


「そうは思うけど、僕は特に荒立てるつもりはないよ。」


「もちろん。私もです。」


冷静な理緒を見て僕も冷静になった。


相変わらず理緒の仕草にドキッとするけど、


こんなにも身近な人たちが不倫関係にあるということを知って、それが過ちであると言うことを認識しているのに、


僕らが過ちを犯そうとしてどうするというのか…。


「今、先輩がいてくれてるから冷静でいられます。」


理緒はほほ笑んだ。
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